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さて今月のコラムは、情報の提供とは少し違った趣になりますが、患者さんにとって必要な医療者とはどんな人なのか、ということについて少々考えてみたいと思います。 医療には大学病院などで行う専門性の高さが必要とされるものから、一般の開業医が行う日常的な医療まで様々あります。どちらの医療が優れているか、などという話ではありません。風邪をひいたくらいで何も大学病院までいく必要もありませんし、そのような場合にはかかりつけのお医者さんに診てもらうほうが、その人のことをよく知っていてくれるのでいいということもあります。 大学病院であれ、開業医であれ、病気になったとき、その症状だけを診るのではなく、その症状や病気を持った「その人」を診てくれる医者に出会うことが大切のように思います。
私は最近、「歯科臨床医のノート 40years 」という本を読みました。横浜市で開業なさっている 讀 肇彦 先生が書かれた本です。顎関節症治療についての専門書ですが、その中のコラムに先生の歯科臨床に対する想いが綴られていますので、いくつかご紹介したいと思います。 〜〜〜〜 「口腔を診ることは、治療しながらその(患者)人生を見ていることである。すなわち、その人をとり囲む環境や風土なども含めての診断や治療であるべきだと考えている。」 「臨床での患者さんの言葉は、いつでも真実を物語っていて、決して自分の体について嘘はいわないと考えたい。ただ、表現の方法、言葉の使い方などからなかなか術者側には、言葉の持つ本当の意味が伝わらないことが多い。臨床の場では、術者と患者との間を行き交うものは言葉しかないことから、患者さんの言葉には十分注意し、全神経を傾けなくてはならない。」 「歯科教育のなかで、今までは口腔とは物を噛むための器官として教えられてきた。歯はものを食するためであり、噛む行為が円滑に行われるようにするのが第一義であった。・・・・・1日約1時間、1/24(日)が物を噛む時間で、残りの23/24(日)は物を噛むという運動をしていない。・・・・・歯科医療が咀嚼させることのみに目的があるとするならば、歯科は患者さんの人生の1/24(日)のみにかかわることになる。23/24(日)には歯科はまったく関係ないのだろうか。否、歯科は物を噛まない時間帯の23/24に極めて深く重く関わっているのである。・・・・・その理由は、人の口腔(咬合)は、心身と深く関わっているという事実からである。・・・・・その事実は多くの臨床例が物語ってくれる。」 〜〜〜〜 患者さんの病気だけを診るのではなく、1人の人間として診る、という讀先生の診療姿勢から、歯科医療に対する情熱が伝わって来ます。どんな症状に対してもあきらめない熱意、そして患者さんを包む暖かい人間性を感じます。 讀先生の医院には、当院の院長が開業までの5年間、勤務していました。私も先生の診察室に何回かお邪魔することがありました。讀歯科医院には一般の患者さんのほかに、難治性の顎関節症患者さんが日本全国からたくさん来院されていました。どの患者さんに対しても、どのような訴えに対しても真剣に患者さんの言葉に耳を傾ける、その熱意にいつも感動していました。 先日、この本の出版記念パーティーがあり、久々に讀先生ご夫妻にお会いしました。(奥様も歯科医で、とても仲の良いお2人です。) 讀先生ご夫妻の医療に対する姿勢を受け継いだものとして、私たちも日々の臨床に携わっていきたいと思っています。
【参考文献】
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