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 お口の健康コラム Vol.15
歯科医師 石井久恵 


プラキシズムについて

 耳慣れない言葉だと思う。ブラキシズムとは、「歯ぎしり」のことだ。「な〜んだ!歯ぎしりするって言われたことないから、関係ない。」と思った人も、ちょっと待っていただきたい。なぜなら、歯ぎしりには、音のしないタイプもあるのだ。

 ブラキシズムは、正確には次の3つに分類される。

 グラインディング
 クレンチング
 タッピング

 一般的に言われている歯ぎしりは、グラインディングのことだ。グラインディングとは、つまり横にずらすことだ。横にずらして、歯をこすり合わせるから、ギリギリという音がする。

 横にずらさないで、噛みしめるタイプをクレンチング。リズミカルにカチカチ咬むのがタッピング。グラインディングとタッピングは音がするので、本人が気づいていなくても人から指摘してもらえる。しかし、クレンチングは音がしないため、教えてはもらえない。その上、本人も全く気づいていないことが多い。

「歯を噛みしめていたら、気づくはず。私はしていない。」
と思っても、案外わからないものなのだ。

 なぜなら、クレンチングを測定する実験の結果、程度の差こそあるが、全くクレンチングをしなかった人は、いなかったそうである。

 ブラキシズムは様々な症状を起こす。

・修復物(つめものや、銀歯、クラウン、ブリッジなど)が、よく取れてしまう。
・知覚過敏(虫歯ではないが、冷たいものや熱いものがしみる)を起こす。
・寝ている間に、歯が割れてしまう。
・歯周病が進む。
・歯の神経に炎症を起こし、虫歯でもない歯がズキズキ痛む。等々・・。

 歯科医がお口の中を診れば、「噛みしめているな」と想像はつく。「歯に力を入れて咬む習慣があるかもしれませんよ。」と問いかけてみる。「いいえ、そんなことしてません。」と答えるかたが殆どだ。

 しかし、無意識にする癖だから、気をつけて観察してみてほしい。歯科医は悪い癖を見つけて、「ダメよ!」と怒っている訳ではない。痕跡はあるが、実体は見えないのだ。

 クレンチング(ブラキシズム)の強さにはストレスが関係している、と言われているため、「疲れていませんか?ストレスはありませんか?」とお聞きしたりする。

クレンチングかな?と思った歯科医がいろいろ質問しても、気を悪くしないでいただきたい。「もしクレンチングしていたら、どうしよう!」と怯える必要もない。

 なぜなら、「歯を噛みしめる」という行為(歯ぎしり、タッピングも含む)にはストレスを発散させる、という働きがあるらしいのだ。考え方によっては、歯を噛みしめることは、人間にとって、最も手軽なストレス解消法なのだ。

 ブラキシズムは使いようなのだ、と私は思う。味方につけてしまえばいい。

 それには、先ず、自分で認識することだ。特別なことではないのだから、すべての人がそうすればいい。

 ストレスなんかない、と思っていても、もしブラキシズムをしていたら本当にストレスがないのか、それとも無視しようとしているのか、自分に聞いてみるのも、いい。自分と対話することを、人は案外忘れている。

 いずれにしても、ストレスが多くなると、人は歯を食いしばってがんばるらしい。それはそれで、素晴らしいことだ。

 でもがんばり過ぎると、食いしばりも強くなり、口が開きにくくなったり、顎が痛くなったり、ひどい肩こりや頭痛を起こすようになる。時には、夜中に歯の痛みで目が覚め、歯医者に行ったら「歯が割れていますよ。」ということにもなりかねない。何事もほどほどに・・。

 その指標、目印にブラキシズムを使えばいい。歯を食いしばってがんばり過ぎているかもな〜。と思ったらストレスをコントロールしよう。そのお手伝いが出来るように、当院ではカウンセリングもしています。堅苦しいことではありません。しばらくお話して、TFTやFAPなど簡単な心理療法を行ったりします。楽になっていただけるように、と思っている。

実際、始めは涙の方も、帰りはとてもいい笑顔を見せて下さる。カウンセリングの後、ブラキシズムは軽減する。不思議なくらいに・・。

 人間って、ほんと、力強い存在だ。どの人も、もともと力を持っている。それを引き出すお手伝いが出来たら、と思っている。

 

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